低融点合金

Since:2007/10/28

今回特に何かに使う、というわけではないのですが、お湯で解ける合金、体温で溶ける合金、常温で液体の合金等等、低融点合金には面白いものがたくさんあります。
実際に見てみたかったので作ってみることにしました。


2008/03/18
一般に低融点合金の素材となる元素は以下の7種類です。
Ga,Cd,In,Sn,Hg,Pb,Bi
このほかに原子炉冷却材などとして利用される合金に、NaとKから成るNaK合金(そのまんまですねw)というものがあります。
NaK合金はほとんどの組成で常温で液体となります。(詳細はNaK合金考察にて)
Hgが様々な金属とアマルガムという合金を作ることは有名ですが、Hg自体に毒性があるので特に近年ではほとんど利用されていません。
同じく常温で液体の合金にGaとInからなるガリンスタンというものがあり、こちらは成分元素からもわかるように毒性がなく、安全な液体合金です。
実はこれを作ってみたかったのですが、GaもInも入手は困難で価格も極めて高価です。
何時かは拝んでみたいものですが、今回は融点約60℃のウッド合金を作ってみようと思います。

ネットを見ているとウッド合金といっても融点、組成には様々なデータがあるようです。
成分元素 Bi Sn Pb Cd
個々の融点℃ 271 232 327 261
質量% 50 20
25
20
12.5
10
12.5
今回はこの組成で製造してみます。(08/03/20 訂正)

材料

Biです。最近価格が異常に暴騰しています。
購入時は\3000/kg程度だったのですが、現在は\12000/kgもするようです。


Pbです。鉛蓄電池から取り出したものです。実はこれが原因で……


Cdです。ご存知のとおり毒性をもつ金属です。(何故か単体のCdは毒劇には指定されていません
粉塵を飛ばしたりすると危険なので、切断はでかいニッパーでちょん切ります。

Snなんですが、横着してステンレス用ハンダを使用しました。
一般的にステンレス用ハンダには質量%で60%のSnが入っており、ヤニもないのでそのまま使用できます。
Pbを混ぜることで最終的な比率調整を行います。


製作過程はただ混ぜるだけなので省略します。
何れの金属も融点は低いので、ガスバーナーで簡単に溶かせます。
一般的に合金を作るときは融点が低いものを溶かして、そこに高融点のものを加えて「溶かし込んでいく」のですが、Cdは蒸気圧が高く、蒸気を吸入すると極めて危険なため、一番最後に回しました。
確かSn(半田),Bi,Pb,Cdの順で加えたと思います。
うまくいけば、混ぜ終わって冷却し始めてもなかなか凝固しません。
60℃程度だと空気との温度差が小さいので冷める速度も遅くなります。


これが完成した合金です。ビニール袋に入れたままお湯につけて、袋の型に整形してみました^^
測定してみたのですが、この合金の融点は約75℃でした。予測よりかなり高いです。

原因は上記のPbにありました。
電池に使われるぐらいなんだから高純度だろう、と思って鉛電池から取り出したのですが、極板の枠の部分はSbが数%混ざった硬鉛が使われているようです。
全体から見れば極わずかな量なのでしょうが、融点にはかなり大きな影響が現れるようです。


おまけ

水銀です。蒸発すると危険なので、ポリ瓶に入れて上から水で蓋をしてあります。
液体金属の表面は原子の配列が極めて規則的であり、ほぼ完全な鏡面になっています。

表面張力が非常に強く、少量をこぼすと綺麗な球体になります。

ドライアイスにより凝固した水銀です。
見た目は青白色で同族のカドミウムや亜鉛に近い感じ。
ペンチでつかむと粉々に砕けました。かなり脆いようです。