多段式コイルガン

SINCE;2008/04/18

久々のコイルガンです。というかHPで扱うのは初めてです。
例によってサイリスタは使用しません。
シングルステージのコイルガンでは、個人レベルでは初速数十m/sが限界のようです。
今回の目標は初速100m/s突破。あわよくば音速を超えることを目指します。


2008/04/18
海外サイトなどを見ると、多段式コイルガンを製作されている方は多くの場合フォトTr等でプロジェクタイルを検知し、その信号で大型のSCRを作動させてスイッチングを行っているようです。
電子制御のほうが損失は少ないですし、好きなタイミングでスイッチングを行えるという大きな魅力もありますが、如何せん素子の入手が困難です。
今回作るコイルガンはスイッチングは機械的な方法で行います。
SCR方式と比べての利点はやはり部品の入手性です。それだけです^^;
しかし、つまりは装置の設置スペースとコンデンサの数が許す限り、10段にでも20段にでもすることが可能だということです。
具体的なスイッチング方法については幾つか案を出したのですがどれも問題が多く、結局一番単純な「プロジェクタイルをそのままスイッチとして使う」という方法を採用しました。
しかしこの方法でもやはりいくつかの問題が発生します。
一番大きな問題は、プロジェクタイルと電極との間で起こるスパークです。
隙間が大きければ大きいほど、激しいスパークが発生し双方を損傷させます。
隙間を小さくすればよいのですが、そうすると今度は摩擦の問題が出てくる可能性があります。
しかし、今回は千分台まで表示されるDRO付きのフライスが使用できるので、クリアランスはほぼゼロ、かつ摩擦なくスムーズにプロジェクタイルが移動できる電極部分を作成できるのではないかと考えています。

2008/04/19

概略図

いつもどおりの適当な図です。早くCADを使えるようになりたい。。^^;
銃身は外形12mm内径10mmのアクリルパイプ、コイル材は1.8mmのPEW線、パワーソースは450V 8200uFの電解コンデンサを各区間にひとつずつ使用します。
また、各区画はセパレート式にして容易に段数を変更可能な構造にします。
赤い部分が電極です。
この方式だとON/OFFのタイミングは電極の位置によって決定します。
すなわち、電子制御だと困難な「プロジェクタイルが任意の位置に来た時に電力供給を止める」ということが可能になります。


コイルの設計
今回のスイッチング方法では、第一区画を除き逆方向へ引き戻す力は働き得ないのでコイル長の設計は自由度が広がります。
吸引力を大きくするためには@「コイル長は短く、巻き数は多くする」ことになります。
しかし実際にはA「巻き数を大きくすればするほど抵抗が大きくなり、流せる電流は小さくなり」ます。
@Aから、コイル長を固定して巻き数を増やして言った場合、どこかで変換効率は極大をとるはずです。
また、コイル長は短くしすぎると加速距離が短くなりコンデンサ容量をもてあます結果になります。
経験から今回はコイル長を50mmとし、巻き数を変えてひたすら実験をすることで、極大となる値を調べます。


プロジェクタイルの設計
材質はSS400、電磁純鉄、Co-HSS(ドリルやエンドミルの根元)等が考えられます。
重要なのは全長です。この値と電極位置から通電タイミングが決定します。
コイルの中心とプロジェクタイルの中心が重なる時までは加速が続くはずですが、負方向への吸引力がまったく働かないようにするためにはプロジェクタイル先端がコイル中心を通過する前にOFFにする必要があります。

理想はこんな具合です。
電極は省略して一個として書いてあります。
電極とコイルのキョリを10mmとすると、プロジェクタイルは35mmということになります。


変換効率

入力エネルギー
電解コンデンサ
450V-8200uF ×10段
8300J

プロジェクタイル
材質 SS400
全長 35mm
直径 10mm
質量 21.7g
運動エネルギー
100m/sのとき 108J    変換効率 1.30%
340m/sのとき 1250J   変換効率 15.0%

コイルガンの効率は良くて数%といわれています。多段式にしたところでそれが大きく改善されるとは考えにくいです。
10段での音速突破は微妙ですが、100m/sならば十分目指せると思われます。
ちなみレールガン1号機の最大出力は約80Jだったので、100m/sでもこれを超えることになります。



2008/04/24

弾速計
レールガンの時に作ったのと同じ回路でもう一個作ろうと思っていたのですが、中国製の安いのを見つけたので買ってしまいました^^;
自作だと部品代が4000円、電車賃が往復で1000円、さらにパーツの買出し+製作時間かかってしまいまうので買ったほうが早いです。


これを購入しました。
かなりしっかりしたパッケージです。


フレームはアルミ製、LEDは4ケタ表示。


バッテリー内臓の充電式です。電池交換しなくていいのがうれしい^^
ちなみに弾の通るパイプもアルミです。


フォトTrが前後4コずつついています。どれかひとつでも遮られると信号を出す仕組みのようで、測定ミスが出にくいように工夫されています。
たしか以前作った弾速計に使用したフォトTrはひとつ300円ぐらいした気がするのですが…


とりあえず必要なものはすべて手に入ったので明日から製作開始です。


2008/04/24


旋盤で巻いた実験用のコイルです。かなり楽に、短時間で巻けました^^
30回×10層巻きですが、初速を測定しながら解いていきもっとも効率の高い場所を見つけます。
弾はSS400がなかったのでS45Cです。
パイプ内径が9.8mmだったので外形9.7mmまで旋盤で削りました。

しかし問題も発生。。
1mm厚のアクリルパイプだと、コイル巻きの応力に耐え切れずにひびが入り、それでも巻き続けると破断してしまいます。
端面や電極の取り付け部分はフライスをかけないとならないのですが、こちらも刃があたると簡単に欠けてしまいます。

ここで設計変更。
アクリルパイプをポリカパイプで代用します。
外形12mm、肉厚1mmは規格にないので、外形13mm、肉厚2mmのものを使用。
此れに伴い、プロジェクタイルの直径も9mmとなります。
肉厚が大きくなった分効率は落ちますが、強度がなければどうしようもないのでここは妥協します…



2008/06/13

ポカーさんにアドバイスを頂き、アルミパイプを使用することにしました。
一般に金属パイプを用いると渦電流による発熱が大きく、効率が低下するとされていますが、このように縦方向にスリットを入れることで渦電流の影響を小さく抑えることができるようです。



旋盤でぐりぐり巻いていきます。撓ったりする事は無いので非常に楽です。一つ数分で巻き終わります。


で、写真が無いのですが、先月とりあえず二段のものを試作して試射してみました。
電極とプロジェクタイルの間の隙間はギリギリまでつめました。
パイプ内径9.9mm、プロジェクタイル外形9.7mmで、殆ど隙間なし。非常にスムーズに移動します。
しかし逆に言うと、僅かにプロジェクタイルが損傷して表面に凹凸ができただけで、詰まります^^;
隙間を広げると、今度は損傷が大きくなり、恐らく同様に詰まってしまうでしょう。
機械スイッチは失敗。と言うか無理という結論が出ました(笑




































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と言うわけで、光センサ&巨大サイリスタで行きます。
最初の「部品の入手性」とか無視しまくりですが、手に入ってしまったので良しとします^^;