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熱核融合炉
-Farnsworth Hirsch Fusor
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SINCE;2008/04/18
・概要
 実用化に向けて研究が進められている核融合反応ですが、実は家庭レベルでも反応を起こすことが可能です。
今回製作するのは、60年代にPhilo Taylor Farnsworthが考案したFarnsworth Hirsch Fusor(以下 Fusor)というもので、慣性静電閉じ込め式の熱核融合炉です。しかし、この方式は入力エネルギーに比べて核融合による反応エネルギーが遥かに少なく、エネルギー源として使えるようなものでは有りません。このため核融合「炉」というよりは核融合「装置」と言った方が無難かもしれません。
 タービンを回すような出力を得ることはまず不可能だと思うので、反応によって生じる中性子線、陽子線を観測すること、可能であれば熱電変換素子により電力に変換することを目標とします。

 核融合を起こすためには、原子核同士を核力の強く働く距離(10^-15m程度)まで近づける必要があります。原子核同士はクーロン力により反発するので、あらかじめかなりのエネルギーを与えてやらないとここまで近づくことは出来ません。
軽水素に於いてクーロン力によるポテンシャルとエネルギー保存則から、十分離れた距離で原子核1つが持っているべきエネルギーを計算すると、約1MeVとなります(実際にはトンネル効果により、この10分の1以下のエネルギーでもポテンシャル障壁を乗り越え、反応は起こります)。よく「プラズマを1億度に加熱〜」といわれるのは、このエネルギーを持たせてやるためです。
ちなみに1億度では原子核の持つ平均エネルギーは0.01MeV(=10keV)程度なのですが、これはあくまで平均値であり、中には遥かに速く動き回っている原子核も存在するので、上記のトンネル効果と相まって核融合反応は起こります。また、上の計算は真空中においてのものです。周囲に比較的高密度のプラズマが存在する場合は、ポテンシャルの大きさは距離が離れるにつれてより大きく減少します。このため更に少ない初期エネルギーで原子核同士を衝突させることが可能になります。ようはひたすら高温、高密度の状態を作り出してやればよいわけです。恒星の中心はまさに理想的な核融合炉です。
 恒星は重力によって高温のプラズマを狭い空間に閉じ込めていますが、地上で同じように重力を用いて閉じ込めることは不可能です。現在主に研究されている実用的な核融合炉は強磁場によってこれを閉じ込め、プラズマの密度を上げると共に、高温のプラズマが装置壁面に接触することを防いでいます。Fusorは数10kV程度の電圧をかけて無数の原子核を一点に向けて加速し、瞬間的、局所的に高温高密度の状態を作り出して核融合反応を起こさせます。
 個人レベルで1億度のプラズマを維持することが可能か、というと、答えはYesです。そもそも「温度」なんてのはマクロな見方をしたときの物質のもつエネルギーを表した後付の概念であり、何億度というのも、平均10keVのエネルギーをもつ粒子で構成されたプラズマを無理やり「温度」で表したものに過ぎません。地上に作られる核融合炉は、温度は1億度で有ってもプラズマの密度は精々1mg/m^3程度であり、殆ど真空のような状態で、プラズマ全体の持つエネルギーは想像よりも遥かに少ないものとなります。80度の熱湯に5分入っていたら間違いなく死にますが、80度のサウナに5分間入っていることは可能であるのと同様に、1億度といえどもそのプラズマは極めて低密度であり、それも炉の中心に集中して存在するため、装置の壁面が融解、損傷させられるような温度まで加熱されることはありません。尤も、近年の磁場閉じ込め式核融合炉は相当高い密度のプラズマを維持できるようで(そもそもそれぐらいでないと実用的なエネルギーを取り出せない)、プラズマが漏れたりすると装置へのダメージもあるようです。

・装置の構造
 まず真空引き用、燃料投入用のバルブ、各種圧力計等のついた真空容器を製作します。
ステンレスの棒材等を用いて直径が300mm及び50mmの格子状の球体を製作します。小さいほうを大きいほうの中心に納め、それぞれを絶縁して小さいほうに電源の負極、大きいほうに正極をつなぎます(正極側はアースします。
これを真空容器中に入れ、可能な限りの高真空を作ります(TMP欲しい。。w
燃料(重水素)を投入し、電極間に30kVの電圧をかけます。すると、正に帯電している重水素原子核は外側の格子状電極(正極)から内側の格子状電極(負極)に向かって加速します。一部の原子核は格子に衝突しますが、残りは速度を保ったまま格子の間をすり抜け、炉の中心に集まります。30keVのエネルギーを持った原子核がこの一点に集まり、局所的ではありますが核融合が起こりえる高温高密度の状態が実現します。

・反応式
 今回は燃料として重水素を使用します。概要で軽水素を用いた場合の反応条件に触れましたが、重水素を用いることでこの敷居はぐっと低くなります。
 文献等が見つからなかったので以下は推測ですが、軽水素原子核(陽子1個)に対し重水素原子核は陽子と中性子が一つずつくっ付いた構造をしています。このため、図1.1のように陽子側同士が衝突しようとする場合に超えなければならないクーロン障壁は軽水素の場合と同じですが、図1.2、図1.3のような向きで近づいた場合、それぞれ障壁の高さは図1.1の場合の1/4、1/9となります。実際の衝突は三次元で起こるので、図1.2や図1.3のような衝突の割合はそれほど高くないかもしれませんが、どちらも0%である軽水素を用いる場合に比べればずっと低い温度で反応を起こせるはずです。三重水素では中性子がさらに一つ増えるのでこの割合が大きくなり、より効率があがると想像できます。
図1.1 図1.2 図1.3


 条件がうまくそろえば、Fuser内部では式1及び式2の反応がほぼ1:1の割合で起こり、陽子線と中性子線が発生します。

D + D → T(1.01 MeV) + p(3.02 MeV)────@
D + D → He3(0.82 MeV) + n(2.45 MeV)────A


09/02/22
 まずは真空容器の製作から入ります。前述したように装置自体は特別過酷な環境にさらされるわけではないため、特殊な材料を使う必要はありません。今回は素材として、真空に耐えられる強度、入手性、加工性から、SS400を選択しました。
形状について、本当は円柱形、欲を言えば球形が望ましいのですが、家にある機械では加工が困難なので立方体とします。厚みは9mmありますが、内部を真空にしたときに一つの面にかかる力は1tを超えます。接合部は気密を確保するのは当然として、かなりの強度を持たせる必要があります。


これが購入した材料です。約380×380×9のSS400で、8枚あります。大きさが正確ではないので、組み立てる前にフライスでサイズを調整します。


切削ちう。ラフィングエンドミルでバリバリ削ります。仕上げ面はあまり綺麗にはなりませんが、作業は早いです。


とりあえず一枚完成。サイズは375×375としました。ちなみに重さは一枚約10kgです。7枚使用予定ですが、一枚は内側を大きくくり貫くので総重量は60kg程度になると思われます。