レールガン製作記

SINCE;2005/12/01

レールガンとはEML(電磁飛翔体加速装置)の1つで、その中でも最も良い効率を出せる装置です。
火薬を使う装薬銃とは違い、推進力は大電流から生み出されるローレンツ力であり、理論上の初速度の上限は光速のみとなります。
実際に音速の何十倍という他の方法では不可能な速度まで物体を加速させることが可能です。

このページでは、レールガンの銃身となる本体の製作記録を載せています。
以下は製作しながら書いた文章なのでおかしな記述もあるかもしれませんがご了承ください。。

レールガンなんて作れるの?
そう思われる方が多いかと思いますが、結論から言えば作れます。
十分個人でも製作可能ですし、莫大な費用がかかるわけでもありません。
ただ金属の飛翔体を加速させる場合、かなりの高エネルギーを入力しないと、発射される前に弾がレールと溶着してしまいます。
今回はある程度の速度を持った状態でレールに突入、同時に通電させることでこれを防ぎ、低エネルギーでの発射を可能にしました。
低エネルギーといっても、コンデンサへの充電エネルギーは3KJを超えます。
これは7.62×51弾のマズルエネルギーと同等です。
当然3KJというエネルギーが100%弾へ伝わるわけではありません。
今回は10%のエネルギーを運動エネルギーへ変換し、1gのアルミ材を約800m/sで発射することを目標とします。

重要
まず初めに断っておきますが、今回のレールガンは法に触れるものではありません。
というのも、銃刀法の規制する銃、砲、空気銃のどれにも当てはまらないからです。
銃刀法での銃の定義は「けん銃、小銃、機関銃、砲、猟銃その他金属性弾丸を発射する機能を有する装薬銃砲及び空気銃(圧縮ガスを使用するものを含む。)」とされています。
つまり、ローレンツ力を用いるレールガンは法律上「銃」ではないわけです。
最近エアガンが規制されましたが、それより遥かに殺傷能力の高いスリングショットやボーガンが規制されていないのと同じ理屈ですね。





レールガンの仕組みは非常に簡単です。
これは上下2本のレールの間に導体の弾丸をはさみ、通電している図です。
赤が黒の矢印は電流、青の矢印はローレンツ力を表しています。
二本の向かい合うレールに電流を流すと、その周りに磁場が形成されます。
2本のレールに流れる電流の向きはそれぞれ逆なので、レールの間ではそれぞれの電流が作る磁場は強めあい、図の表から裏へ向かう向きになります。
そして左手の法則に従い、青の矢印の向きに力が発生します。
その力ははさまれた弾丸へ加わり、加速→発射されるというわけです。

で、今回作ったレールガンは全長800mm、幅100mm、高さ80mmの大きさです。
加速レールは長さ500mm、幅40mmの真鍮板で、レール間距離は10mmとしました。
残りの300mmでプラズマによる一次加速を行います。
圧縮空気で加速するのが一番楽なのですが、それをやると銃刀法に引っかかるので(汗

口径は一辺10mmの正方形となっています。
四角銃身にしたのは、単に加工のしやすさからです。
装薬銃のような円状の銃身にしたほうがエネルギーの変換効率は高くなるのですが、私の持っている工具ではその加工はできませんでした。

また、口径に対してかなり本体が大きいように思われますが、レールの反発力とプラズマの圧力、そして発射時の反動を抑えこむ必要があります。
そのため加速レールを絶縁体で覆った後、上下は12mm厚、左右は25mm厚のSS400()板で覆っています。
そして板どうしはM10のボルト28本で硬く固定されているため、並の圧力ではびくともしません。

側に使用した鉄板(加工前)
右 100×800×12 左 38×800×25


  

最終的にはM12の穴を84個(!)あけましたw
深さに換算して合計176cm、重量約1700gを削り取ったことになりますw
しかしここまで加工するのに、M4.2一本、M7一本、M10二本のドリルが刃こぼれして使い物にならなくなり、M12も大分消耗しました。
加工した後は凄まじい量の鉄の切子が出ましたが、どうせ錆びて土に返るのでそのまま放置(死

これをボルト28本で組み合わせ、側は完成です。
ここまでの工程、一日中作業を続け、加工開始から丸三日。



 

これは4.2のした穴を開けた状態。
この後さらにM5.5の通し穴を開け、面取りして皿ネジで鉄板へ固定します。

レールです。発射時にはこのレールに通電させます。
今回使用したのは8mm厚の真鍮板です。500mmの長さの物を購入したのですが、片方の板が505mm強あったため、この後余計な部分を切断しました。
組み込み後、外部から側の鉄板に触れないように電極をつなぎます。
本体には穴を開けて、側の鉄板にネジを切り固定。
できる限り摩擦抵抗を減らすため、ペーパーを2000までかけ、さらにピカールで研磨。

2005 12/25現在の様子
上部の鉄板をはずした状態

なんだかそれらしくなってきました。
簡単そうに見えて結構気を使います。
特に絶縁に。。
絶縁体を敷くだけでは、発射時の熱で変形する可能性があるので一工夫。
今後数十KJ級の入力での発射にも耐えられるよう、弾がレールへ突入するポイントにも一工夫。。
何をしたのかはヒミツです(爆
しかしそれを超える数百KJ級の入力になると、根本的に絶縁方法を変える必要が出てくると思いますが(汗
うーん、ISASのレールガンはどうやってるんですかねぇ…




12/30
やっと下半分完成…
正月突入でしばらく作業ができないので、一度全てのボルトを閉めて組み立てました。
この状態で約30sあります。
さらに内部に真鍮製のレールがもう一本組み込まれるので、さらに2sほど増加…
もっっっのすごく重いですが、強度は凄まじいです。
東海地震で家が崩落しても、ネジ一つ取れることはないと思いますw

2006/01/05

まだ本体未完ですが、一つ問題が浮上。
それはレールの消耗。。
其れなりの高速度でレールへ弾体を撃ち込めば、溶着してしまうことは避けられるでしょう。
が、恐らく突入時に発生するジュール熱で弾体の先端部がプラズマ化してしまいます。
弾がプラズマ化するのなら問題はさほどありませんが、当然そのジュール熱はレールにも加わります。
レールが解けてしまっては一発発射しておしまい、というマヌケなオチで終了です(汗
まぁ解けるといっても表面1mmにも満たない部分でしょうが、これはレールガンにとって致命的で400Vという低圧では空気の絶縁破壊が起きる距離はわずか0.13mm。
弾体とレール間の距離がこれ以上開いてしまったら通電しません。
二酸化炭素でレール内を満たす方法もありますが、これでも距離は0.17mm程度。。
結局通電しません…

今考えているのは何とかしてもっとデカいコンデンサを入手して、10KJ程の入力で大量のプラズマを発生させる方法です。
そして弾体はPCを使用します。
レール間を導体である金属のプラズマで満たして通電させ、プラズマ自体に働くローレンツ力でPCの弾体を加速させます。
これならレールに大きな負担は掛かることは無いはずです。
しかし、そもそも元の入力電圧が400Vなので低密度のプラズマを通電してくれるかどうか、また如何にレール内の気密を保ちプラズマ漏れを防ぐか。。
まだ問題は多いですな。。


2006/1/21

本日ベネッセの模試でしたが、帰宅後速攻で作業開始(笑
上半分の加工。
基本的には下と同じ要領です。
下のレールを完成させるのには数日かかりましたが、今度は半日足らずで上半分完成させました。
そして側の鉄板に穴を開け、レールへ電極をつなぎます。
とりあえずこれで発射可能にはなりましたが、口径が10×40mmもあり、間違いなく初速が稼げないので、左右を15mmづつ詰めて10×10までもっていきます。



2006/02/05

後部に30mm厚のA7075(超超ジュラルミン)板を取り付け、とあるプラグを取り付けます。
ここにスチールウールを詰め込み、一気に2KJを加えてプラズマを発生させるわけです。
微妙に本体と離れているのは、間に気密取り用のゴム板がはさんであるためです。

これは本体に穴を開けるのに苦労しました。
800mmの長さの鉄板の側面に穴を開ける必要があるので、ボール盤を使うことができません。
そこで…



わかりますか?
7.2V用の充電式電動ドリルに家庭用電源を整流したものをぶち込んでいます(爆
普段は8.4vの電ガン用のバッテリーでまわしているんですがw

140Vいきなり流したらどうなるかわかったもんではないので、スライダックで調整しながら流してみました。
大体60Vで使用してみましたが、すさまじいパワー+音(悲鳴)です(笑
60V以上まで上げると、かなりヤヴァげな音がしたのでここでとどめておきました。
トルクも回転速度も並じゃないですw SS400がまるでアルミでも削っているかのようにサクサクいけましたw
しかし発熱が酷かったので、今度ヒートシンク取り付けますw



2006/02/11


 
左・銃身を詰めて10×10になりました。
写真は銃口とは逆から撮ったものです。



これで銃身は完成です。
製作期間は約3ヶ月、かかった費用は2万円ほど。